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第5話「白子とご主人様の戦闘準備」 「ご主人様にお願いがあります」 三人でのんびりくつろいでいたとき、白子が妙にかしこまって俺に声をかけた 「ん? なんだ? 改まって」 「実は私…。バトルに、参加してみたいんです!」 「ぎゃにぃい!?」 「し、白ちゃん!?」 まさか、こんな事を言うとは… 「黒ちゃんが毎日うなされてて、私たちにはどうすればいいのか分からない…」 「それは俺だって考えている。でも…」 「そんな、だって…。白ちゃんまで怖い目にあうこと無い!」 あわてて止めようとする俺達二人を白子はかぶりを振って静止する 「一杯、考えたんです。…私も、一度戦場に行ってみたら…何か分かるかも…」 白子が一瞬うつむくが、すぐに凛と顔を上げ 「もう、決めたんです」 その表情を見て、俺も黒子も、白子の説得は不可能だと察した しばし沈黙が流れ、やがて意を決したように 「ボクも、出る!」 「黒ちゃん!?」 「ボクが原因なのに、白ちゃんばっかりにやらせることなんてできない!」 俺は頭痛を感じたが、戦場の恐ろしさに立ち向かうことで黒子のトラウマも軽減されるかもしれない そう思えば、俺に出来ることはたくさんある 「タッグマッチの部門もある。二人ペアで参加するのがいいだろう」 「ご主人様…!」 白子がとがめるような声を出す。過保護な部分がある彼女は黒子を止めるべきだと考えているんだろう しかし、俺はそれを黙殺し、 「それと、二人に、新しい名前をつけてあげよう」 「ご主人様?」 「え? なんで?」 「せっかく試合に出ると決めたんだ。それなのに白子黒子じゃあまりにおざなりだろ?」 「あ、やっぱり自覚あったんですね…」 「じゃあ、ご主人様はボクが試合に出るのに賛成してくれるんだ!」 「ああ、いずれこういう日がくるかもと思って考えていた名前があるんだが、…マリンとアニタってのでどうだ? 白子がマリンで、黒子がアニタだ」 「マリンと、アニタ…ですか」 「いい名前です! 気に入りました!」 「そうか、気に入ってくれたか…。なら、お前達が史上最強の神姫として君臨できるような武装も用意せねばならんな…」 「は?」 「えっと?」 「クククク、待っていろ二人とも、俺が持つすべての技術を結集して究極の装備を開発して見せるぞ! フフフフフ、ハァーッハッハッハッハッ!」 「ご主人様!?」 「き、気を確かにしてください!」 なんか二人が心配していたが、俺は体中にやる気とアイデアが満ち溢れるのを感じていた ―――次の日の夜 「う~、ご主人様遅い…」 いつに無く落ち着きが無い白ちゃん…じゃなかったマリンちゃん 確かにちょっと遅いけど、まだ電車一つ分くらいしか遅れてない 「マリンちゃん…探しにいっちゃだめだよ」 ボクは面白くなって、ちょっと意地悪な声を出しちゃう それにマリンちゃんがぷぅ、と頬を膨らましてちょっと怒ったような声を出そうとした瞬間 バターーン! という、玄関を蹴り開けるような音が響き、 「ただいまぁ!!」 いつもと比べて異様にパワフルなご主人様の声が響く 昨日はひたすら紙にボクたち用武装ユニットの設計図を書きなぐって一晩明かし、 始発が動き始める時間には「早速上司を説得だ!」とか叫んで家を飛び出していったので非常に不安だったけど、一日中ハイテンションは続いたようだ 「マリン! アニタ! 所長を説得して、スポンサー契約を取り付けたぞ! これでうちの研究所が総力を上げてお前たちのバックアップを行う体制になった!」 急な展開に思わず呆れるボク。マリンちゃんは一瞬ふらついたが、すぐに気を取り直してご主人様に噛み付く 「何でいきなりそこまで話が大きくなってるんですか!?」 そんな言葉をご主人様は全く無視してまくし立てる 「二人のための武装も、マリンのは4日後、アニタのも8日でロールアウト予定だ」 完全新規設計の武装ユニットをたった4日で…。でも 「ボクのは後なの?」 「ああ、それだけでなく、マリンのはサード基準、アニタのはセカンド基準の出力になっているから、セカンド昇格まではマリン一人で戦ってもらう」 「ど、どうしてですか?」 「マリンちゃんだけ戦わせるなんて…!?」 「厳しいことだが、これはスポンサー契約の条件の一つだからどうにもならんことだ。ついでに3ヶ月以内にセカンドに昇格できなければスポンサー契約は打ち切られる」 「たったの?」 「一人でやるのに、それは短いよ!」 あまりに無茶な条件にボクは大声を出してしまう 「大丈夫、サードからセカンドに上がった最短レコードは1週間だ。まあ、シングルで、八百長試合の噂が耐えない奴だったが…。それに比べれば競技人口の少ないタッグなら3ヶ月くらいでいける、かもしれない」 「でも一人でなんて!」 「まって、アニタちゃん…。いいの、私やる。ご主人様が出来るって言ってるんだから、それを信じる」 「マリンちゃん…? だって戦うのって危ないんだよ! 怖いんだよ!」 「わかってる。でも、怖いものから逃げちゃ駄目なの。アニタちゃんもそれに立ち向かうって決めたんでしょ?」 「マリンちゃん…」 「大丈夫、サードはヴァーチャルが基本だから、危険は無い、はず」 無責任な事を言うご主人様 「ご主人様…!」 ボクは思わず咎めるような声を出してしまう。でもマリンちゃんはそれを制して 「アニタちゃん、ご主人様を信じられないの?」 「そうじゃないけど…!」 「そうだ、俺を信じろ。俺の何よりも誇れることは、技術力だ。この世の何よりもな」 そう力強く宣言するご主人様。ボクは長らく黙っていたけど 「…はい」 と頷くしかできなかった 「とりあえず、武装データは先行して完成させてきたから、これでヴァーチャルトレーニングできるぞ」 といって、押入れから訓練機を引っ張り出してくるご主人様。そんなの持ってたんですね… 「それと、これもだ。昔、知り合いの研ぎ師に遊び半分で作らせたものだが、本物の業物だ。これも信頼しろ。俺の次にな」 そういって取り出したのは二振りずつのナイフとマチェットだった。鈍く輝き、見るからに鋭そうな… 「これは…?」 「作ったのは俺じゃないが、設計自体は俺がした。製法も素材もこだわってあるから、硬度も切れ味も並じゃないぞ」 「ご主人様…、本当はボク達にバトルさせたかったの?」 「まあ、そういう気持ちも無くは無かったが、バトルにはあまり興味ないといわれて諦めていたよ」 そういって笑ったご主人様。いつも以上に生き生きしているように見えるけど気のせいだと思っておこう 「とりあえず、俺は出来る事をすべてやった。後はお前達に任せるよ」 「はーい!」 「ご期待に沿えるよう努力します!」 誤配送のときには感じなかった、ゆっくりと温まっていく高揚感。戦うのは怖いけど、ご主人様とマリンちゃんが一緒なら大丈夫 そんな気持ちがボクの心の奥底から湧き上がってくる。やっぱり、ボクも武装神姫なんだ… その夜、久しぶりに、ボクは悪夢を見なかった 続く
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「…見たトコバッテリー切れだな。一応ちまちま充電した形跡はあるが、満充電まではしてないね。おおかた古い型式のクレイドル使ってたんだろうさ。」 ホビーショップ『165-DIVISION』。 中央線沿線でありながら、イマイチ開発が行き届いていない某駅の南口の古いビルの地下にその店を構える、武装神姫中心のダーク系ショップだ。 大して広くも無い店の中は壁から床から真っ黒に塗られ、時々返り血を模したものか真っ赤な塗料をブチ撒けてある。 商品にしても、これまた隅から隅まで店オリジナルと思しきオノだ鉈だチェーンソーだスパイク付き首輪だ(しかも全てご丁寧に返り血ペイント付き)と、アングラ系アクセサリーで満載。 それも全てが神姫向けだというのだから呆れるというか徹底しているというか。 ……まぁよく見れば正規部品も半々ぐらい置いてあるので、一般客も考慮はしてるんだろうが。 これで実は公式公認店舗なんだという。 入り口には蜘蛛の巣やらドクロやらのステッカーに混じって、公式小売店舗を示すラベルが燦然と浮いていた。 なんでも秋葉原の専門店や、その筋じゃ有名なコギトだかエルゴだかいうホビーショップに比べれば規模は小さいものの、そこそこのバトルスペースまで確保しているってんだから驚きだ。 …一体どこにそんな金があったのやら… そして目の前では、カウンター越しにオーナー兼店主である高校時代の友人がこっちをジト目で睨んでいた。 片目に刀傷みたいな珍妙なメイク。服のあらゆる所にチェーンだのリベットだのじゃらじゃらつけたその姿は一種異様で、当時の真面目そうな雰囲気はカケラも残っちゃいなかったが。 「…で、慎。十年ぶりの再会だっつのに、挨拶もそこそこに「神姫直せ」てのはいくらなんでも酷くない?しかも営業時間外だぜ?」 「……あぁ。悪かった。スマンな縁遠。」 俺のあんまりといえばあんまりな返しに、友人…縁遠は溜息をついて苦笑した。 「まぁキミらしいっちゃらしいけどさ。とりあえずあの子だったら大丈夫だよ。中途半端な充電繰り返したせいで電池ヘタってただけだと思うから。」 当時から変わらずこっち方面の腕は確かなようだ。見た目はどうあれ、専門ショップを開いているのは伊達じゃないらしい。 「あとは…ホコリとかで結構汚れていたからクリーニングしてあげて、新しい電池に換えてきちんと充電してあげれば問題はないよ。…それで、こっから本題なんだけどさ。」 来た。握った手に嫌な汗を感じる。 「あの子はキミの神姫じゃないな?どこで拾った?」 縁遠はまっすぐにこっちを見た。 そこだけは昔と変わらない、澄んだ目をしていた。 「…実はな」 ここで俺は、サムライに逢ってからの事を包み隠さず話した。 そして、一つの頼み事も。 「……そりゃ本気で言ってんの?」 「冗談で言えるかこんなこと。実際、お前くらいしか頼れないんだよ。」 しばし睨み合い。 最初に目線を外したのは縁遠だった。 「わぁかったよ頑固モノ。できる範囲でやってやるさ。」 「……済まない。」 「でも、僕ができる事は調べるだけだ。そっから先は関与しない。いいね?」 「ああ。」 …と、一息ついたら腹が鳴った。 そういや晩飯食ってなかったなぁ… 「飯も食わずに来たのか。」 「うっせーよ笑うな。」 「まぁちょっと待ってな…ドリュー、ステーシー、お茶ー」 縁遠が呼ぶと、カウンターの奥の方からかたかたと…紅茶とスコーンを持った神姫が二体出てきた。 片っぽは浩子サンのモモコと同じゾンビ型。 もう片っぽは、ゾンビ型と同時に発売されたという処刑人型だ。 ゾンビ型同様ビジュアル面での問題があり、全くと言っていいほど出回らなかったという。 …こうもちょくちょく見かけるんじゃ、レアリティもクソもないんだがな。 店の雰囲気にやたらマッチした二体は、ゾンビ型の『ステーシー』は縁遠へ。処刑人型の『ドリュー』は俺の方へと背中につけた大きな腕で、器用にお茶の準備をした。 店の雰囲気にまるで合わない、上品なティーカップの中身を一口すする。美味い。 一応礼を言うとドリューは照れたのか、頭につけたホッケーマスクを目深に被って、ギギギだかゲゲゲだか金属を擦り合わせたみたいな音を立てた。 ……やっぱり笑ってんだろうかコレは。 「どうだ、可愛いだろ?」 カカカカカと笑うステーシーを前に、心底得意げに言う縁遠。 …すまん。やっぱ俺にはよく解らん。 その後、サムライの処置が一通り終わる頃には終電も過ぎ。 おまけに「遅ればせながら開店祝いだー!」とか喚く縁遠にしょっ引かれて、朝まで飲むハメになる。 まぁ久々に会ったことには違いないので、なんだかんだで日が昇るまで飲んで語り明かした。 翌朝。調べがついたら連絡するというので、俺はサムライと充電用クレイドルを持ち家へ帰った。 …ちなみに言うまでも無く、補修代及びクレイドル代はしっかり取られたが。商売人め。 --- 「……ん?」 「お、起きたか。どっか痛いとことか動ないとこむぐゃ」 問答無用で蹴られた。 「いきなり何しやが…!」 「なんで助けた。」 硬い口調だった。……まぁ当然か。 「今までだってアタシ一人でやってきたんだ。いつでも野たれ死ぬ覚悟くらいはあった!手前ぇなんぞにお情けもらう謂れは…!」 「だったら俺の前で倒れんじゃねぇよ。」 今度はサムライが黙った。 「…俺はな。お前さんがどこの誰かは知らんし、どこで野たれ死のうが知ったこっちゃねぇさ。」 「………」 「でもな。助けられんのが嫌なら俺の見てる前で倒れんな。目の前で死なれたりしちゃ寝覚めが悪ぃっつーか、飯がマズくなるんだよ。」 「………」 お互い黙り込む。沈黙が痛い。 「……ンだよ。なんか言えよ。」 「偽善者。」 「否定はしねぇ。」 「何様だってんだ。」 「俺様だ。文句あるか。」 「馬鹿だろ手前ぇ。」 「男は大体、馬鹿なモンだ。」 「青瓢箪。」 「職業病だ。」 「唐変木。」 「それがどうした。」 「甲斐性なし。」 「…関係ねぇだろ。」 「種無しカボチャ。」 「ぶっ壊すぞガラクタ!」 また沈黙。 そして、サムライは堪え切れずに吹き出しやがった。 「………くっせぇ台詞。」 「…………うっせ。笑うな。」 何故か笑うサムライに、耳まで真っ赤になった俺がいた。 ……多分これが一生の不覚ってやつなんだろうか。 エピローグへ
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第六幕。上幕。 ・・・。 2035年12月31日。千葉峡国神姫研究所。 大晦日の夜も既に更け、除夜の鐘が遠く響こうとする時刻。既に所員たちのほとんどは帰途につき、その研究所も一年を終えようとしていた。 常夜灯以外の電源が落とされた研究所。しかしそんな沈黙が支配する中で、今尚、所長室には明かりが灯っていた。 小幡 紗枝は、彼女の体躯にしてみれば十分に大き目の事務机の前に座り、その目の前に置かれてあるクリアーカバーで蓋をしたケースに静かに視線を向けていた。 幾度と無く、それに手を触れ・・・しかしやがて離し、大きな溜息と共に椅子に深々と座りなおす。 こんな事を、彼女は一週間も続けていた。 その器の中には目を閉じて眠っているような一体の神姫。違う・・・眠っているのではない。そのCSCは二度と起動する事は無く、その瞳は二度と開かれる事は無いのだから・・・。 そう、『死んで』いるのだ。彼女は。 「ゼリス」 小幡は呼びかけると、その年齢相応の皺が刻まれた顔を両手で覆った。 「・・・」 エゴだろうか。 これまで数十体という神姫のボディを、『失敗作』という名目でCSCを埋め込まず、起動さえさせずに分解してきた自分が。 最早『死した』神姫を、かつての自分のパートナーであるという理由だけで・・・それを分解する事を躊躇うとは。生前の彼女がそれを願っていたというのに。いや、だからこそか。何故、彼女がそんな事を、こんなに辛い事を自分に託したのか。それが理解できないまま。 これほどに。自分は未熟であったのか? ゼリスが遺したZFというファイル。そこには、確かに彼女からのメッセージが込められていた。『自分のボディを分解してほしい』と。『娘たちに、それを受け継いで欲しい』と。 だが、果たしてそれを、簡単に受け入れる事が出来るだろうか? 貴女の『心』を、最後まで・・・私は見る事が出来なかったの? 目をやれば、変わらず。口元に静かな笑みさえ湛えて彼女は永眠についている。美しい翠の髪も。草色のスーツラインも何も変わらない。その合成樹脂によって作られた体を横たえ、昏々と眠り続けている。 この姿を、この姿を失えと? この姿を、私自身に壊せと? そう言うのですか? そんな事を託すなんて。 いや、かつて、我武者羅に研究に打ち込んでいた自分ならば可能だろう。だけど。今、ここにいるのは。 (貴女のパートナーなのですよ?) 幾度目かの溜息。出来ようか。そのようなことが。 そもそもは、探していたのだ。 彼女たち、神姫という人工の存在が。それでも時折見せる『心』の場所。CSCと呼ばれる多大なブラックボックスを内包した超集積プログラミングシステム。それは、口調や性格のパターンを複雑化し、限界まで叩き込んだ人工AIの一種。 組み合わせさえ選べば、性格、精神年齢さえ自在に変える事が出来る、その技術の結晶たるCSC。だが、時として人が作り上げたプログラムが介入できないレベルにまで神姫は・・・この世に現れてからずっと、明らかな不確定要素的な因子を示していた。 それを、小幡はあえて『心』と呼び、解明を行おうとしていた。 やがて。 言語、通訳。朗読や踊り、歌など。『芸術・文化的要素』を強化した神姫シリーズが発足するにあたり、その一つのタイプ・・・通訳等での活躍が期待される言語・発声能力特化型神姫のプロトタイプを峡国研究所が製作し、小幡自身がそのテスターとして『彼女』を受け取る流れになった。 それまで個人では神姫を迎えた事の無かった小幡にとっての、言うなれば、長く『彼女達』と付き合ってきたにも関わらず、『初めての神姫』。 ようやく完成したタイプナンバーはCRZR-C003。プロトタイプ・・・MMSネームを『クラリネット』と名付けられ、小幡の手に渡った。 心の究明の手伝いにもなるだろうと、軽い気持ちでそれを引き受けると。彼女はCSCを生まれて初めて、自分の手でボディにセットした。 そして。その銀の眼を、ゆっくりと開けた神姫が最初に行った行動は。 CSCに基本として導入されているはずのマスター初期確認でもなく、ネーミングのセッティングでもなく。また、自身のコードナンバーを読み上げる事でもなく。 微笑みを・・・優しく浮かべる事だった。 『はじめまして、マスター』 美しい声でそう言って。 小幡の中で、それまで積み上げてきた全てが崩壊していくと同時に。何かが大量に流れ込んできて。意味も解らず、突如としてぽろぽろと涙を流しはじめた彼女を、慌てて『ゼリス』は宥めていた。 (・・・それまで。私は常に無機質な世界を見つめていた) 数式とデータによって支配され、怒濤の様に流れていく歴史に取り残されまいと。虚ろな瞳で急くように走り抜けていた。 それがこの世界の法であると信じて。 だが、彼女と出会い。彼女と暮らす事で。時間という風が緩やかになっていく。 相も変わらず忙しい日々。神姫のパーツ開発、また、武装神姫プロジェクトの発足によるテスト武装の試験。 それでも。その風は緩やかに吹いていた。 『風に、憧れます』 そう言った彼女に、風になりたいのかと聞いた事がある。 『いいえ? 風になりたいのではなく。風に憧れるのです』 謎々のような事を言って。ゼリスは笑った。 少し不思議な感覚を有している彼女は、しかし研究所の皆からも愛されていた。 やがて。 第一期武装神姫の武装テスト中、彼女のCSCリンクシステムに異変が発見された。 記憶の消失。どうしようもない欠陥の発覚。 泣きながらも真実を伝える私に。彼女は微笑みかけたのだ。 『・・・とても、とても嬉しいです』 何故? どうしてかと問う私に。 『だって。これだけの想いを、私は受けているのでしょう?』 そう言って、ようやく彼女は静かに泣いた。 想いを『受けている』? 私は、その感覚を理解する事は出来ず、戸惑いと悲しみに打ちひしがれるだけだった。 ・・・。 ふと、涙の温かさを感じ。小幡は顔を上げた。 涙。 そうだ。いつから、私は涙を流せるようになったのだろうか? ただ、灰色で。無機質な日々でしかなかった。彼女に会うまでの、それまでの生きてきた長い日々。 その世界を。風が吹きぬけるように・・・色取り取りの美しい世界にしてくれたのは。他ならぬゼリスだった。 ほんの少しの、ちょっとした事で心が揺れる事を知り、喜ぶ事を覚えたのも。 海を眺め、空を見上げ、移り変わる世界に思いを馳せながら、夢を描く事を知ったのも。 頬を濡らす涙を流す事を教えてくれたのも。 全ては・・・彼女と共に、歩み始めてからではなかったか。 『・・・マスターは』 ふっと、思い出したようにゼリスは銀色の瞳で私を見つめた。 『とても人らしいヒト、ですね』 いつものように謎々のような事を言う彼女。 私は最初から人ですよ? と困ったように問い返した私に。 『えぇ、けど。最近とってもヒトらしいなって、思うんです』 そう言って、イタズラっぽく。彼女は笑った。 「そうですね・・・」 ゼリスと出会い。 「私の方・・・だったのですよね」 『神姫』である彼女に照らされるように、それまで何事にも急き走り続ける事しか出来なかった私が。 「貴女と出会う事で」 ・・・共に生きる事で。 「心と、心が触れ合う事を知りました・・・」 涙がケースに滴り落ちる。 「『心』を生む事が出来たのは、私の方でした」 人である私が。神姫であるゼリスから。 人としての心を貰って。 『人になれた』のだ。 ・・・。 小幡はコンピュータのモニタートップの『ZF』と名付けられたファイルを見つめていた。 ゼリスの言葉。ゼリスの声。ゼリスの姿。全て、そこには宿っている。 そして。遺志さえも。このちっぽけなプログラムの中に。 小さくても。そこには確かに翠色の風が、宿っている。 ・・・。 「翠?」 ふっと。 小幡は、目の前で眠り続けるゼリスの髪に目をやった。美しい髪色は、全く変わることなく艶やかに流れ、その肌は今も生前の美しさを保っている。 「・・・」 瞳が揺れた。 彼女は、ようやく。 その、長きに渡る研究と。自分が抱いてきた謎の解を知った。 (『違う』) 人ならば既に、色も何もかも変わっているだろう。 その身は荼毘に伏され、美しい姿を残す事も無く、今は写真を眺めるくらいしか出来ないだろう。 彼女達は人ではない。神姫だ。それは解っていた。それは理解していた。 だが、いつから? いつから勘違いをしていたのか? その体は人工の物。作り出された美しい樹脂の結晶。 そして・・・その『心』もまた、『人間に似せられて人工的に作られている』と。そう信じてしまっていた。それは間違ってはいない。CSC、ヘッドコア、ボディユニット。 全ては人が生み出し、人が作り上げた存在である。 だが・・・だが、それでも? それでも、彼女たちの心を人が作ったと言えるのか!? 「違う・・・」 今度は口をついて出た、その言葉。 神姫は。 『神姫の心を有している』。 『心』を解明しようと。その心が生まれる瞬間を知ろうと。彼女を迎えた時には。 『神姫の心』を、『ヒトの心のミニチュア』としか考えず。彼女はいつしか・・・ただ、その既に出ていると思った結論を受け入れようとして、それをただ科学的に証明しようとしていただけだったのだ。 人の心を元に。神姫の心があると信じていた。 「そうではない・・・そうですね?」 答えぬパートナーに、小さく笑いかける。何と愚かなマスターだろう。そのような事は、貴女がずっと。ずっと伝えてくれていたのに。 『神姫には。神姫としての。ツクリモノではない。確かな心がある』。 小幡は後悔の涙を流した。 「許してください・・・ゼリス」 私はずっと、『人の心』の尺で全く違う存在を計ろうとしていたのだ。どれほど、心の解釈を彼女に押し付けただろう。 「貴女は・・・全てを知っていたのでしょうね」 ゼリスは、それらを神姫の心で受け止め、そして。それこそ命尽きるまで答えてくれていたのだ。 だとすれば。 「・・・」 彼女の遺志。それもまた・・・人の心では計れぬ行為なのか? 「貴女は・・・『神姫』として、何をしようとしているのですか?」 問いかけ、その心に想いを馳せる・・・。 その遺志は、彼女の・・・『自分を残す事』。 小幡の動きが止まった。浮かべていた哀しい笑みが震えるように崩れ、目が見開き、驚愕の面持ちに変わっていく。 「まさか・・・」 それは。神姫である彼女であればこその。 『継承的行為』。 「あ・・・あぁっ・・・?」 小幡はケースを、震える、その少し節くれだった手で抱き上げた。少し揺れ、中のボディがカタリと壁にぶつかった。 「・・・貴女は・・・!」 眠り続けるパートナーは静かな微笑を湛えている。 人は死して名を残すという。子を残し、身体は自然に帰し、いつしか大地に戻る事が出来る。 ・・・神姫は。作られた体の神姫は。その身体を残す事しか出来ない。その美しい、姿だけは残さんとする。 愛してくれた主の為に、大切にしてくれたマスターの為に。彼女達はたくさんの思い出が詰まった身体を残すだろう。 「・・・そう」 『身体しか残せない』のだ。 彼女達はそれ以外に、それこそ何も抱かずに生まれてくるのだから。母も父も、子も無く。ただ、生まれてくるのだ。 自分が自分であったという証拠。それさえも。貴女は。後の神姫に、渡してくれと。 『そんなに驚いた顔をしないでください。ずっと前から決めていました』 ・・・。 その決断を下して。どれほどの恐怖と戦いましたか? 死した後、自分の身体が切り刻まれる事への恐ろしさは、人の比ではなかったでしょう。 どれほどの哀しみを抱きましたか? 自分が『いなくなる』という事を思い、その小さな身体で、絶たれる未来に・・・どれほどの哀しみを宿したのですか。 どれほどの涙を・・・私達に見せないように流したのですか? それは神姫にとって、『全てを失う』に等しい行為なのに。ただ。『母』として。姿も知らぬ『娘達』に心を込めた身体を贈る事を。 『身体を失っても。マスターや皆さんと一緒に、『心』があります』 ・・・。 小幡は、止め処なく零れ落ちる涙の中。確かにその声を聞いた。 信じていたのだ。科学的に何も実証されず。人間でさえ信じようとする者が少ない、その、掛け替えの無い物。 『心』。 それは。彼女が。 恐らくは世界で始めて、自らの意思で『死す事を選んだ』神姫である彼女が。 誰よりも優しく、妹たちを、娘たちを見つめていた彼女が。 子を為す事も出来ず、自身の未来さえ絶たれた一体の神姫が。辿り着き、望んだ、最後の結論。 彼女に許された唯一の・・・『未来を紡ぐ方法』だったのだ。 ゆっくりと小幡はケースを手に立ち上がった。 「ありがとう・・・」 貴女を作ったのは私。 私の心を生んでくれたのは・・・貴女でした。 返さなくてはならない。この恩を。 私を人にしてくれた貴女へ・・・身を裂かれる様な思いに貫かれても。『人の心』が、苦しいと悲鳴を上げても。 貴女への恩に報いましょう。 未来を、紡ぎましょう。 なおも重い足を、それでも作業場に向ける。 少し疲れたような微笑を浮かべ、ケースを開けて。翠の髪を指先で軽く梳かす。 「受け継ぎましょう・・・」 貴女の、遺志を。 『人としての心』を持つ私が。貴女の『神姫としての心』を・・・受け継ぎます。 母として。友として。 そして・・・『娘』として。 ・・・。 夜が白々と明け始める頃。作業は終了した。銀色の小さなケースを載せた台車を押して、小幡は酷い表情で再び所長室に戻ってきた。 長く息をつき首を振る。想像通り、それは凄まじい精神的苦痛を伴った。心が砕かれるような思いの中。それでも彼女は・・・全てをやり遂げた。 CSCの神経リンクとの硬着。今の規格とは違いすぎる・・・完全な旧式化で使えないパーツ。最早、ほとんどの部分が利用できないと覚悟していたが。それでも少しながら、利用可能な部位を取り外す事が出来た。 銀色の、小さなケースを机に並べていく。 数は僅かに5つだけ。 どんな神姫がこれを受け継ぐのだろう? そんな事を思い、ふっと、小幡は苦笑する。 こんな旧式のパーツ、きっと『いらない』と笑われるだろう。普通に考えれば。 だから、これを受け継ごうとする、受け継ぐ神姫は・・・貴女に似て、少し、変わっているのでしょうね? ゼリス。 まだ姿さえ知らぬ・・・彼女たち、『ゼリスの娘たち』は。 一つ目のケースには『喉』。 それはクラリネットタイプの特徴の一つ。声帯を内包した部位。様々な言語を使いこなす・・・透き通るようなあの、声量豊かな声。 この喉を受け継ぐ神姫は・・・その美しい声を響かせ、それに乗せて『心を伝える』事になるだろう。 二つ目のケースには『脚』が一対。 少し古い感じのするデザイン。ゼリスのスーツカラーがそのまま残る場所だ。堅めの足裏でカタコトと、小気味良い足音が今はもう懐かしい。 この脚を受け継ぐ神姫は。どれほどの困難があろうとも。強い意志で『心と共に歩む』だろう。 三つ目のケースには『手』・・・。 高質樹脂ではない。少し表面がざらついているのが特徴の合成樹脂。どことなく、彼女らしい素朴な感じのする小さな手。 受け継ぐ神姫は、全てを優しく抱きしめて来た手で、『心を包む込む』事だろう。 四つ目のケースには『眼』が入っている。 光を宿す銀色の瞳・・・相手の目を見つめて話す事を心がけていた、彼女の柔らかな、表情豊かな視線を宿した部位。 受け継ぐ神姫は、目を逸らしたくなる過去さえも乗り越え・・・真っ直ぐに『心を見つめる』神姫だろう。 そして・・・。 最後の一つのケースを机に置く。それだけは少し小さ目なケース。そして他の物よりも、遥かに丁重に扱われるように、多重のケースに入れられている。 (・・・。・・・) 何故、この部位が全く損傷無く取り外せたのか。CSCが活動を停止した今。それが取り外せたのは奇跡に近い。 小幡は明るくなりつつある空に目をやり、窓を開けた。 風が吹き込む。 貴女は私の娘。 そして、私は貴女の娘・・・。 上りつつある陽に目を細めながら、小幡はゆっくりと言葉を紡ぐ。 「全ての妹たち・・・」 陽光は輝き、闇の空を開けていく。 「・・・全ての娘たちよ」 肩に、確かに彼女を感じる。いつものように穏やかな表情で、その美しい声を響かせて。 冷たい風が髪を遊び、カーテンを軽く吹き上げる。 翠の髪、銀の瞳。パールと草色のスーツを身に纏った、美しい神姫がいた。 プロトタイプ=クラリネット。名をゼリスという。 流れ往く時間の中で。彼女の名はいつしか忘れられ、歴史に埋もれていくだろう。 (消えはしない) 彼女は言ったのだ。『心』がありますと。 世界で始めて、母となる事を選択した神姫。 (消せはしない・・・) 声が重なっていく。 「貴女たちを、愛しています。これまでも、ずっと。これからも・・・」 自分の声と、他ならぬ、優しい『母』の声。 「そして・・・」 重なり、やがて。 あの、懐かしい声が響いた。 『想いと共に。未来を紡ぎなさい』 西暦2036年。1月1日元旦。 全てが忙しなく流れ往き、歴史の波濤が全てを覆い尽くす時代。 そんな中でも時として。 草色の風が舞い、緩やかな『想い』が彼女達の髪を梳き・・・流れる事があった。 第六幕。下幕。 第六間幕
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ウサギのナミダ ACT 1-30 □ ティアと共に、歩き慣れたこの道を歩くのは、実は初めてだと気がついた。 はじめの時はティアの電源は切っていた。 その後の時には、ティアは一人アパートに残って自主練していた。 「まあ、それでお前が家出したのは、苦い思い出だが……」 「言わないでくださいっ」 ティアは俺の胸ポケットに顔を埋めて恐縮する。 俺は苦笑しながら、ゆっくりと歩いていく。 手には、いつものようにドーナッツの箱。 今日は海藤の家に向かっている。 ゲームセンターに出入りできなくなった俺は、いい機会だととらえることにして、お世話になったところに挨拶まわりに行くことにした。 海藤の家に来るのは、前回からそれほど経っていなかったが、随分前のような気がする。 その短い間に、あまりにも多くのことがあり過ぎたのだ。 だが、そのおかげで、こうしてティアと共に海藤を訪問できる。 嬉しいことだった。 「やあ、よく来たね。入って入って」 海藤はいつものように、俺たちを歓迎してくれた。 「いらっしゃいませ」 そう言うアクアの涼やかな声も変わらない。 俺が二人の様子に思わず笑みを浮かべると、二人とも満面の笑顔を返してくれた。 海藤はコーヒーを淹れながら、旬の話題を口にする。 「バトロンダイジェストは見たよ。随分白熱した戦いだったみたいじゃないか」 相変わらず、海藤はバトルロンドの情報収集に余念がない。 テーブルの上に、くだんの最新号が置いてある。 表紙を見るたび、面映ゆい気持ちになる。 「その表紙は勘弁してほしかったんだがな……」 「いいじゃないか。その表紙、結構インパクトあったみたいだよ。 ネットでも評判を調べたけど、かなりの反響だ。 記事の内容については……特に神姫との絆についての言及は、おおむね好評みたいだね。 思うところがあるオーナーはたくさんいるみたいで、神姫との絆について、あっちこっちで議論になってる」 「へえ……」 それは知らなかった。 俺は意図的に、雪華とのバトルについての情報を集めるのを避けていたから。 神姫と人間との関係について、改めて考える契機になるならば、それはそれでいいと思う。 「それで、だ。海藤……」 「ん?」 ドーナッツを頬張る海藤に、今日の本題を切りだした。 ■ 「久しぶりですね、ティア」 「はい……アクアさん」 アクアさんとこうして話をするのは、実は初めてだということに、今気がついた。 でも、そんな感じが全然しない。 それは、よくマスターからアクアさんのことを聞いているからだろうか。 それとも、アクアさんが醸し出す雰囲気から来るものなのか。 アクアさんはイーアネイラ・タイプの典型だった。 落ち着いた物腰、優しげな表情、大人びた美貌に、鈴の音のように美しい声。 でも、アクアさんはそれらがさらに洗練されているように思える。 「ずっと……アクアさんとお会いしたいと……お話したいと思っていました」 「あら、そうなのですか? どうして?」 「アクアさんが……マスターが初めて憧れた神姫だから……」 わたしは少しうつむいて、言った。 マスターは、海藤さんとアクアさんを見て、神姫マスターになりたいと思ったという。 海藤さんとの仲がいいだけではなく、アクアさん自身にも魅力があるということだと思う。 わたしは思っていた。 マスターの心を動かせるほどの、アクアさんの魅力ってなんだろう? 「わたしは……嫉妬しているのかも知れません。 こうしてマスターと心通わせることができても、どんな神姫になればいいのか、わからなくて。 アクアさんなら、マスターが憧れた神姫ですから、きっとそのままでもマスターは満足なのではないかと……」 アクアさんは、優しい微笑みを浮かべながら、わたしを見ている。 「そんなことはありませんよ」 「そう、でしょうか……」 「あなたがボディを変えられて目覚めたとき、わたしもそばにいました。覚えていますか?」 「は、はい……」 わたしは少し恥ずかしくなる。 あのときも、わたしは泣きじゃくって、アクアさんに優しくしてもらった。 わたしは優しくしてくれた人たちに、お礼を言うこともできずにいて、やっぱりダメな神姫だと思ってしまう。 「あのとき……遠野さんはとても嬉しそうでした。わたしが今まで見た遠野さんで一番」 「……」 「今日も、とても嬉しそうな顔をしています。 あんな表情をさせるのは、ティア、あなたです。 遠野さんが神姫マスターになるきっかけだったわたしではなく、あなたなんですよ」 アクアさんはにっこりと笑う。 アクアさんは優しい。 今日もわたしを優しく励ましてくれる。 不意に、アクアさんは目を閉じて、こう言った。 「わたしも、ティアがうらやましいです」 「え……?」 なぜ? 海藤さんと幸せに暮らしているアクアさんが……わたしのマスターがうらやむほどの神姫が、なぜわたしをうらやむというのだろう。 「あなたが武装神姫として戦い続けているから。 マスターが本当はバトルロンドを続けたいと思っているのを知りながら……わたしは何もできないでいます。 あなたは戦える。遠野さんが望むように。 それがうらやましいんです」 驚いた。 アクアさんみたいに優しい神姫が、戦うことを望んでいるなんて。 「でも、アクアさんの想いも、海藤さんの望みもかなうかも知れません」 「え?」 「わたしのマスターが、かなえてくれるかも」 少し驚いた顔のアクアさんに、わたしはそっと微笑んだ。 □ 「『アーンヴァル・クイーン』と戦ってみないか」 それが今日の俺の本題だった。 バトルロンドを捨てた海藤だが、バトルをしたくないわけではないはずだ。 それに、クイーンならば、どんな条件を海藤がつけても、バトルしてくれるだろう。 俺は海藤に、クイーンがなぜ俺たちを指名したのか、その理由を語った。 「クイーンは、特徴のある神姫と戦い、戦い方を吸収しようとしている。 だから、バトルの場所も設定も、こちらの要求が通るはずだ」 「……」 「バトルのことを公にすることには、彼らはこだわっていないみたいだし……条件付きで、クイーンとバトルしてみてはどうだ?」 俺は別に『アーンヴァル・クイーン』の肩を持っているわけではない。 海藤自身、彼らに思うところがあるようだったし、機会があれば協力してもいい、みたいなことを言っていた。 雪華のスタンスは、バトルを拒む海藤に、ぎりぎりの妥協点を見つけることができるかも知れない。 それに、海藤だって、バトルロンドに未練があるはずだ。 クイーンとバトルして、その思いが再燃すればいいと思う。 それでアクアの心配の種も、一つなくなるはずだ。 だから、思い切って切りだしてみたのだ。 海藤は、一つ溜息をついた。 「まあ、確かに、クイーンに協力したいとは言ったけどさ……」 俺は黙ってうなずいた。 「だけど、まともなバトルロンドじゃ勝負にならないだろうし……彼らが望んでいるのも、そこじゃないんだろうしね……」 「……海藤」 「なんだい?」 「そんなに、バトルロンドに戻るのが嫌か?」 「……僕は一度、裏切られたからね」 苦笑いする海藤。 だが俺は言葉を続けた。 「だけど、バトルロンドは素晴らしいと思ってるだろう?」 「……うん、そうだね」 「この間、お前の家に来たときに言われた言葉……今でも覚えてるよ。 『バトルだけが神姫の活躍の場じゃない』ってな。 その時は俺も、バトルロンドをあきらめようと思った。お前の言うことももっともだと思っていたさ。だけどな……」 海藤は不思議そうな顔をして、俺を見つめている。 俺は続ける。 「あるホビーショップで、武装神姫のバトルを観て……ああ、やっぱり、バトルロンドはいい、と思った。 自分の神姫とともにバトルする時間は、何物にも代え難いと思う。 俺はバトルを諦めたくなかった……だから、今こうして、ティアとバトルができる。 お前も……そろそろ諦めるのをやめて、いいんじゃないのか」 沈黙が流れた。 長い間黙っていたような気がするが、大して時間は経っていないようにも思える。 やがて、海藤はまた溜息をつく。 「まいるよね……そんなに熱く語るのは、君のキャラじゃないんじゃないの?」 「……最近宗旨替えしたのさ」 「まあ……あのゲーセンじゃなければ……ギャラリーがいなければ、やってもいいのかな……」 「海藤……」 やった。 海藤がとうとうバトルに戻ってくる。 冷静を装いながらも、俺の心の中は沸き立っていた。 「それじゃあ、クイーンに伝えてよ。 バトルは受ける。そのかわり、これから僕が言う条件を飲んで欲しい。それでいいならバトルを受ける……あ、その条件でも、雪華が望むものは観られる、と伝えておいて」 「わかった」 そして、海藤から提示されたバトルの条件を聞くにつれ……その奇妙な内容に、俺の方が首を傾げた。 □ 「……それで、クイーンとアクアのバトルはどうなったの?」 隣を歩く久住さんは、興味津々といった様子だ。 ホビーショップ・エルゴに向かう途中の商店街を、俺たちは歩いている。 俺は少し渋い顔をしながら答えた。 「うーん……圧勝といえば圧勝だったんだけどさ……」 「へえ、さすがクイーン」 「いや、アクアが」 「え?」 久住さんは、目をぱちくりとさせて、驚いている。 それはそうだろうな。 俺は胸ポケットのティアに尋ねる。 「なあ、あの時のアクアと雪華の対戦、三二対○でアクアが取ったんだったか?」 「あ、最後の一本は相打ちだったので、三二対一でアクアさんです」 「……なにそれ?」 ミスティもきょとんとしている。 まあ、それもそうだろう。 普通のバトルロンドでなかったことは確かである。 どんな対戦だったのかというと、それはそれは地味な戦いで、雪華は手も足も出ずにあしらわれたということなのだ。 信じられないかもしれないが、本当なのだから仕方がない。 この戦いについては、いずれ語ることがあるかも知れない。 俺がエルゴに行くのは、店長に改めてお礼に行くのと、約束通り客として買い物に行くのが目的だった。 日暮店長は相変わらず熱い人で、俺が改めて礼を言うと、照れながらも喜んでくれた。 そして、先日の神姫風俗一斉取り締まりについて、少しだけ教えてくれた。 店長が、俺の渡した証拠を持って、警察にあたりをつけたとき、すでに警察内部でも、神姫虐待の疑いで神姫風俗を取り締まろうという動きがあった。 その発端となったのは、例のゴシップ誌に載ったティアの記事だったという。 あの記事は予想外の反響があったらしい。 そのため、警察も見過ごすことができなくなっていたのだ。 ただ、神姫風俗の取り締まりを、どの規模で行うかは決まっていなかった。 今回の一斉捜査にまで規模を広げるように尽力してくれたのは、かの地走刑事だったそうだ。 なるほど、警察の動きが妙に早かったのは、下地があったからなのか。 しかし、日暮店長が何をしてくれたのかは、何度訊いてもはぐらかされて、分からずじまいだった。 もう一つの用事である買い物は、もちろんティアのレッグパーツの改良用部品である。 エルゴには十分な部品が揃っているし、日暮店長も装備の改造や工作にやたら詳しい。 俺は自分で書いた図面を持ち込み、日暮店長と相談しながら部品を揃えていく。 在庫がないパーツは、カタログを見ながら店長のおすすめを聞き、それを注文した。 届いたときには、またエルゴに足を運ばなくてはならない。 時間もかかるし、電車賃もばかにならないが、店長へのせめてものお礼ではあるし、俺自身がこの店に来るのが楽しみで仕方がない。 久住さんも一緒に来てくれるのだから、そのぐらいの負担は大目に見ようという気になろうというものだ。 □ その久住さんには、彼女がホームグランドとしているゲームセンター『ポーラスター』に案内してもらった。 あの事件以来、俺とティアはバトルができる状況じゃなかった。 対戦のカンを取り戻すのと同時に、新しいレッグパーツ、新しい戦術も試さなくてはならない。 そのためには、日々の対戦環境がどうしても必要だった。 自宅でのシミュレーションでは、どうしても限界がある。 『ポーラスター』は、俺たちのいきつけのゲーセンよりも大きく、バトルロンドのコーナーも倍くらいの広さがあった。 それでもすべての対戦台が埋まっているほど盛り上がっているし、神姫プレイヤーも多い。 久住さんがバトロンのコーナーに入って軽く挨拶しただけで、歓声に迎えられた。 大人気だった。 あとでこの店の常連さんに聞けば、彼女はずっとこの店の常連だという。 『エトランゼ』として、他の店を飛び回っていることが多いので、この店に戻ってくると、常連プレイヤーたちの歓迎を受けるらしい。 久住さんの紹介で、俺はこの店でバトルする機会を得た。 ティアの新しいレッグパーツを試し、調整し、また戦う。 新しい技や戦術も実戦の中で試すことができた。 時にはミスティに協力してもらい、練習したりもした。 ありがたい。 おかげで、ティアは新しいレッグパーツをあっという間に使いこなせるようになり、新戦術を使いながら、バトルロンドを楽しむことができた。 『ポーラスター』は、客の雰囲気がいい店だった。 俺がティアのマスターだとばれたときには、ちょっとした騒ぎになったが、誰もが紳士的な態度でほっとした。 神姫マスター同士も和気藹々としていて、まずバトルを楽しもうという気持ちが感じられる。 初級者でも、上級者にバトルについていろいろ尋ねることをためらわないし、聞かれた方も丁寧に答えている。 このゲーセンの実力者は、久住さんを含めて五人いるそうだが、五人ともこのようなスタンスを貫いているという。 故に、中堅の神姫プレイヤーも初級者も、ついてくる。 そんな環境だと、上級者のレベルが頭打ちになりがちだが、エトランゼに影響されて、他のゲーセンに遠征する常連さんも多いという。 その結果、総じて対戦のレベルが高くなっている。 理想的な環境だと思う。 俺が通うゲーセンもこうだといいのだが。 □ そんな風に過ごして、一ヶ月が経った頃。 土曜日の夕方の『ポーラスター』。 久住さんと一緒にバトルロンドのギャラリーをしていた俺に、電話がかかってきた。 通話ボタンを押すと、 『わーーーーーっはっはっは!! みたか遠野、ざまあみろ!!』 大声の主は、大城だった。 隣の久住さんにも丸聞こえで、思わず吹き出している。 「……いったいなんなんだ、大城」 『ついにやったぞ! ランバトで、三強を倒して、ランキング一位だ!』 「おお……それはおめでとう」 そうか。 ついに大城と虎実は、あのゲーセンで一位になったのか。 それは、俺が待っていた連絡だった。 『どうだっ! 俺たちだってやればできるんだぜ、わっはっは!』 『つか、話が進まねぇだろ! かわれ、バカアニキ!!』 電話の向こうで、大城の神姫が叫んでいる。 しばらくして、虎実の静かな声が聞こえてきた。 『……トオノか?』 「そうだ」 『アタシ、ランバトでトップになった』 「聞いたよ」 『……約束、覚えてんだろーな』 「忘れるはずがない。俺たちをバトルロンドに引き留めてくれたのは、お前との約束だよ、虎実」 『ばっ……んなの、どーでもっ……そ、それよりも、ティアと! ティアと戦わせてくれるんだろ!?』 虎実の声がうわずっている。 照れているのが手に取るように分かる。 俺は思わず苦笑した。久住さんの肩で、ミスティが吹き出している。 「もちろん。お前がそう言ってくれるのを待っていた」 『なら……約束を守ってくれ』 「わかった」 明日、いつものゲーセンで。 ついにティアと虎実のバトルだ。 俺は携帯電話の通話を切ると、いつものように胸元にいるティアに声をかける。 「ティア……約束を果たそう」 「はい、マスター」 そう言うティアは嬉しそうに微笑んでいた。 次へ> トップページに戻る
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[部分編集] カービン もともとは馬上で使用する軽量なライフルの事。現在では室内等で使いやすい短くされたライフルをこう呼ぶ。ただし明確な定義はない。ライトガンカテゴリーのイーダ型の武装。ライフルとハンドガンがあるので選ぶ時は注意。 ガイア ヴァルハラのトップに君臨している(いた?)神姫マスター。専用シルエットのオーラ(?)により独特の雰囲気をかもし出している。その厨二病溢れる言動から色々とネタにされ、「大地さん」と親しまれて(?)いる。かっこいい専用戦闘BGMがあるが、イベント戦でしか聞けない。相方はストラーフMk.2のハーデス。説明では他人の大事なものを壊すことが好きなS(意訳)とあるが、むしろただの戦闘狂という方が近い。とりあえずチューブステージでCHIKARAはやめて下さい。 楽器 打撃武器の一種なのだが、このゲームのルールにおいて弱い要素が揃っているためどうにも使うのが難しい。ちなみに打撃に使用する割に何故か打楽器はない。もちろん楽器は本来武器ではないが、ゲーム等では武器として登場することがたまにある。なお、DLCで登場する武器パラボナソナー"マポノス"は楽器カテゴリの武器では楽器の形状はしておらず、純粋な兵器の形状である。補足:ベイビーラズは公式に打楽器を持っているが、ドラムセット本体はリアパーツ、スティックはダブルナイフ扱いであり、パーカッションは通常頭に付けているためか武装ですらない。 勝ち組 何かの要素で勝っているとされる者達の事。男性ならば身長・財力・ルックスなどだったりするが、女の子ばかりな神姫においては一部パーツの大きさで決まると言われる。バトマスでは一般的にイー姉、レーネ、アーク、紗羅檀、オールベルンあたりが勝ち組と呼ばれる。一方で負け組とされる神姫については記述を避けるが、おおむね指摘するとムキになるのが負け組だとい(ここから先は何かで汚れていて読めない)勝ち組側は大抵その事に自覚が無く、「大きくてもそんなにいいことないんだけどなぁ」といった発言が飛び出すことが多い。…ある奴と無い奴の溝は何よりも深く昏いのである。ちなみに、神姫の場合胸パーツは換装できるが、やっぱりそういったパーツは需要があるのか和津香のような悲劇を産むことになったりも…。 滑腔砲 戦車などの大砲で砲身内に砲弾を回転させる旋条がないもの。より高速で砲弾を発射したり、回転すると効果が落ちるタイプの砲弾を発射するのに使う。神姫では、フォートブラッグのリア装備、FB1.2mm滑腔砲がこれにあたる。神姫の装備では、なぜかバズーカ扱いである。対して、砲身内に施条を切って砲弾を回転させる砲をライフル砲(施条=ライフリング)と呼び、こちらは回転することで砲弾の飛行が安定するので、より命中率を求めるタイプの砲弾用の砲となる。 ガトリング ガトリング砲。100年以上前に発明された機関銃。多銃身がリング状に配置されていることが特徴で、複数の銃身を回転させる事で装填、発射、排莢のサイクルを自動で繰り返しつつ連続射撃を行うことを可能とした。手持ち式ガトリングは単銃身で連続射撃が可能かつ軽量の機関銃の登場で一気に廃れたが、同じ数の弾丸を発射した場合銃身が複数ある分だけ銃身へのストレスが減るため発射サイクルを上げても銃身寿命が長い、万一不発弾などの不具合が生じても滞りなく次弾を発射できる等の利点があり、現在では重量が大きいことより動作不良が問題になる航空機搭載機関砲や艦船のCIWSに採用されている。なお、初期は手動式だったが、現在は電動等が用いられる。ちょっと使いにくい武装だがRA「T・ARMS」を入手するとつい使っちゃうんだ。 ガブ/ガブ子 ガブリーヌの俗称の一つ。 ガブリーヌ パンドア製神姫、ヘルハウンド型ガブリーヌ。前作DL神姫でシナリオは第7号にて実装される。自分は地獄から来た、と主張するが、同期の蓮華には「地獄の駄犬」呼ばわりされていた。グラ姐未登場の本作においては、唯一の褐色肌神姫である。 金朋地獄 蓮華の中の人、金田朋子嬢の言動が、あまりにハチャメチャで聞いた者の腹筋を破壊する上に抜け出せなくなる中毒性を持つところから付けられたもの。既に固有魔法の域に達しているとも。バトマスのプレイ動画でも、蓮華が取り上げられると、もれなく金朋地獄のタグが付けられている。今から蓮華のシナリオが実装される日が心配楽しみである。←DLC第5号にて実装。予想通りの金朋地獄が堪能できましたw余談だが、本人のブログ名が「カネトモ地獄 早起きは三文の毒」であり、ある意味公認の言葉である。 キシマさん プロキシマの俗称の一つ。 キメラ キメラ装備とも。複数の動物の混ざった姿をした神話の合成獣キメラを語源とし、転じて神姫各々の純正装備以外の武装を一つでも装備した状態を指す。見た目の整合性やキャラクター性より、よりストレスなく嫁神姫を操作できることを重視したアセンブルスタイル。しかし実際アビリティの補完、戦闘スタイルの自由度確保のため、アクセサリーと武器については何がしか純正以外のものを装備しているプレイヤーがほとんどで、暗黙のうちにアクセサリーと武器に限っては何を装備していてもキメラではないと見なされている。また、固有RAを使用できる純正武装だけでコストを使い切ることはまずないので、空いている部位に追加の武装を施す「純正+α」のアセンブルもごく普通に行われる事である。対戦の際にはこのあたりについてどうするか確認しよう。ぶっちゃけ完全純正以外のアセンブルがアリかナシかで全く別のゲームになる。古くは神姫のゲームがバトロンのみだった時代からある単語で、性能重視で外見がすごいこと(全身ハリネズミのようにブースターがついているなど)になっている神姫が主にこう呼ばれた。キメラの名はそのような外見も関係していたのかもしれない。バトロンでは最終的に武装がまったく同じで素体だけ違う神姫ばかりという状態になったこともあり、「(性能的)個性がなくなる」という事実から「キメラ」を否定的に考えている層も少なくない。しかし武装神姫はもともと公式に組み替え遊びを是としている玩具であり、組み替えの自由がある。結局は「他所は他所、ウチはウチ」の精神が大切ということだろう。また、先の経緯からキメラという呼び方を蔑称として使う人、受け取る人も少なからず居るので空気を読む事も忘れずに。 キャッキャウフフ 一般的には「じゃれあう様子」をさし、神姫とイチャコラする意味で使われる。「キャッキャウフフ」と半角で記載することが通例である。 旧黒子 初代ストラーフの俗称の一つ。ストラーフMk.2と区別するための呼び名。 旧白子 初代アーンヴァルの俗称の一つ。アーンヴァルMk.2と区別するための呼び名。 牛丼/ぎゅうどん/ギュウドン/ギュウドン 戦乙女型アルトレーネの事。バトルロンドやバトルマスターズにおいても、ぎゅうどん会話ネタがついてきたため。 キュクノス ドレス・メカニカ製神姫、白鳥型キュクノス。鴉型アラストールと同じく、コナミが2011年にイベントと通販のみで発売した神姫で、武装部分はレジンキャストになっており、素体はMMS NAKEDを用いる。彼女の登場のために、ガレージキット版で白鳥・黒鳥と呼ばれていたオールベルンが剣士型にされたと勘違いされ、一部のファンからあらぬ恨みを買う羽目になっていたりする。(実際にはオールベルンが「剣士型」として製品化が発表されたワンダーフェスティバル後の飲み会で製作が決まったため、無関係と思われる。また、オールベルンガーネット・ジールベルンサファイアもほぼ同時に発表されており、そちらの影響とも考えられる)アラストールと同様に、武装セットのみがDLC第7号にて実装される。オールベルンにキュクノスのリアを組み合わせ、「白鳥型オールベルン」を再現した紳士も多いのではないだろうか?戦力面でも、オールベルンの純正装備にキュクノスのリアを組み合わせると空中移動系のアビリティが全て揃う(急上昇・急降下、空中ダッシュが追加)ので、悪い組み合わせではない。 強化ミミック ストーリー終盤とクリア後のMAPにてエンカウントするミミックの強化型。SPDとDEFの初期値がずば抜けており、他の部分の数値も素体中で高い部類である・・・が、このゲームではSPDの値が反映される上限がある。また出現の条件を考えると自神姫も十分に強くなっている為、あまりミミックと大差なく感じるかもしれない。ただし、ジャスティスやミミックを育てているときには、Love1だろうと、外に出ると強化ミミックが襲ってくるので、そこだけは注意されたし。 グラフィオス マジックマーケット製神姫、サソリ型グラフィオス。素体未登場だが武器(レサートロッドシステム等)だけ登場。AIは非常に好戦的な性格付けがなされており、「悪の組織の女幹部」や「魔王」などと称される性格の持ち主。ことバトルに関してはマスターに対しても高圧的にふるまうことも。イーアネイラ並の豊満ボディに、胸部装甲とサイハイソックス以外は紋様を描いただけの実質裸という抜群の露出度を誇り、美少女型が大多数を占める神姫達の中で他にイーアネイラ型、プロキシマ型くらいしか居ない美女型。加えて他にはガブリーヌ型しかいない褐色肌であるなど希少性要素のオンパレード。選択肢を広げる意味でも、バトマスにも登場して欲しかった。武装の殆どがリアに集中しているのが特徴。また武装を組み合わせてサソリ型ビーグルメカ「ウィリデ」に変形させることも可能。更に複数の神姫の武装を合体させるシステムに対応し、同時期に開発されたウェスペリオーと互いの武装を合体させることで、大型ドラゴン型メカ「ゼオ」を作り出せる。そのためフィギュアのプレイバリューは非常に高い。このロマン溢れる複数の神姫の武装を合体させるシステムを持つ神姫は、グラフィオス ウェスペリオーの「ゼオ」の他に寅型ティグリース 丑型ウィトゥルースの「真鬼王」 「ファストオーガ」とカブト型ランサメント クワガタ型エスパディアの「ヘラクレス」がいるが、残念ながらバトマスには一切登場しない。 クラブヴァルハラ メインストーリー中盤以降に登場する非公式バトルを行っている賭博場。名の由来は北欧神話において決戦のときに備え戦士達の魂を集める宮殿ヴァルハラ。勝てば相手の武装を手に入れ、負ければ武装を剥奪される。ここにしか出てこないマスターもいる。登場時点では非合法な場所のはずなのだが、ゲームセンターで見かける面々がホイホイ出入りしていたり、違法改造が横行している割に敵の戦闘能力に差異はないなどあまり緊張感はない。浄化後はそれに拍車がかかる。tipsにもあるが問題なのは現金による賭博と神姫の違法改造であり、ここでの神姫バトル自体は違法ではないため安心してほしい。一部マスターが、賭け金がどうのこうのと呟いていることがあるが、聞かなかったことにするのが大人の対応である。柴田君の武器がピコピコハンマーだけになっている。もうやめて、柴田君の使える武器はゼロよ! グループケーツー 武装神姫世界における神姫製造メーカーのひとつ。フブキのメーカー。長らくシンボルマークが不明だったが、フブキ弐型 ミズキ弐型のマーキングに、縦に並んだKKを図案化したものがあり、これがグループケーツーのシンボルマークと思われる。 クレイドル 神姫の充電に使われる充電器。主人公の部屋にはクレイドルが1個しか確認されていないため、34体以上の神姫をどうやって充電しているのやら…。主に人間でいう寝床のような形で利用するものらしい…が、アークのイベントではどう聞いても押し込んでいる。なお、同イベントの話を聞くと、どうやら一つのクレイドルを使い回している様子だが、さて…。コナミスタイルで通販グッズとして販売もされたりするが、こちらは無論神姫の充電機能は付いていない。代わりと言ってはなんだが、USBに差すとランプ部分が光る。…ただ、それだけである。 黒子 悪魔型ストラーフの俗称の一つ。今作ではストラーフMk.2も含む。 黒にー 悪魔型ストラーフMk.2の俗称の一つ。黒=ストラーフ にー=Mk.2(に)。間違っても黒いニーソックスの略ではないぞ。大体誇り高いストラーフがそんな装備など…、あー、ど、どうしてもというのなら、その…ゴニョゴニョ 黒星紅白 アフォンソファクトリー製のエストリルとジルリバーズの素体部分を手掛けたデザイナー。代表作はキノの旅やサモンナイトなど。エストリル・ジルリバーズ発表時に降臨した本人のコメントによるとペロリストらしい。 軽白子 天使コマンド型ウェルクストラの俗称の一つ。「軽」なのはライトアーマーシリーズのため。ちなみにヴァローナはこの法則からだと「軽黒子」だが、モチーフからか夢魔子と呼ばれることの方が多い。 ゲイルスケイグル(EX) アルトレーネ専用レールアクション。前作では当てにくいレールアクションの代名詞だったが、今作では威力共に大幅な改善をみられた。が、槍の向きが逆なのはアルトレーネ型のいつもの事だったりする。バトロンではちゃんとした向きで投げるのにどうしてこうなった。ちなみに名前は北欧神話に登場するワルキューレの一人の名前からで、「槍の戦」の意味。 ゲームセンター 娯楽施設。他の神姫オーナーたちと神姫バトルを行う場所。子供からお年寄りまでが利用しているが、神姫上級者も多く訪れるようで、普通の人はちょっと入りずらい雰囲気を醸し出しているような気がしないでもない。。ツガルによると主人公が的確に変人を選んで戦っているだけらしいが…あるいは単に主人公の周囲に濃い人が集まりやすいだけなのかもしれない。隣町にもゲーセンがあり、筐体からレイアウトまでまったく同じようだ。全国展開なのだろうか。ちなみに、画面を見るかぎりレースゲームらしきものが見え、他にも紗羅檀のシナリオでリズムゲーム(「神姫が乗って足で遊べる」ということから、恐らくbeatmaniaIIDXだと思われる)が置いてある事が分かっている。 ケモテック 武装神姫世界における神姫製造メーカーのひとつで、ハウリン・マオチャオなどのメーカー。名前通り主に動物を題材にした神姫を取り扱っており、会社のシンボルマークも動物の顔を図案化したもの、と徹底している。神姫デザイナーBLADEのデザイン神姫はほぼここ。 誤爆は神姫名うp スレで誤爆してしまったときは、自分の神姫達につけた名前をうpしなければならないというバトルマスターズ神姫スレの鉄の掟。元々はおもちゃ板の武装神姫スレの鉄の掟「誤爆は神姫(の写真)うp」から。 コナ☆スタ コナミの通販サイト「コナミスタイル」の事。表記の「☆」は略称の語感が某アニメに似るため。武装神姫の限定商品などを取り扱っていたりする。特に地方在住の武装紳士にとって、一般流通しないリペイント版神姫を入手するほぼ唯一の手段でもある。クリアファイル等の「コナスタ限定の」オマケがついてくることも多い。価格は基本的に定価販売(ごくたまにセールをするが、ほぼ瞬殺される)。値段は気にしないが確実に欲しいという場合、ここで予約するのも手だろう。 固有RA 各神姫に特定の武装を施した状態でのみ使用可能になる専用RA、および特定ライバルが使用してくる特殊RAのこと。神姫専用RAにはランク3~5武装を使う通常版(1体のみ例外)と、ランク6~7武装を使うEX版がある。基本的に数を撃ってこその射撃系RAはスキあらば発射できる通常版のほうが使い勝手が良いが武装が貧弱になるという問題があり、EX版はライドマックス状態でしか使えないため出したいときほど使えない。武装も含めて性能はピンキリ。だがやはり、トドメはこれで締めたい。 コンマイ コナミの蔑称あるいは愛称。“KONAMI”をローマ字入力する際、"KONMAI”と打ってしまうことが少なくないことから。またあるアーケードゲームでコナミ自らが誤植してしまったこともある。
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「ハイジャック犯に告ぐ!!この建物は完全に包囲されている!諦めて大人しく投降しろ!!」 深夜8時、大東亜共和国首都の新東京市にて銀行強盗が発生した。 I.N.S.P日本支部サイバー犯罪捜査課勤務の安田 聡美警部補もこの現場に出動していた。サイバー犯罪捜査課は当初は名前道理、インターネットを使った犯罪の取り締まりを行っていたが、2016年のロボティクス・ドライブシステム、2022年のアムドライバー、そして2031年の武装神姫の登場により、それらに関する犯罪捜査も請け負うようになっていった。 「警部、このままでは人質が保ちません。強行突入の許可を!」 「しかしだな安田警部補、今交渉人が説得を続けている。今犯人を刺激するわけには・・・・・」 「だからと言ってホイホイ要求を聞くわけにはいきません!!」 現場近くの本部テント内にて、聡美は上司である初老の警部に食ってかかっていた。 「うむぅそこまで言うなら、やって見せろ。ただし、必ず人質を救出及び犯人確保しろ。MMSの使用を許可する」 「はっ!必ず!!」 しかし、この現場が誰かにとって最後の仕事になることは、聡美自身も判るはずがなかった。 その二:ドライの場合 「と言うわけ、アイン、ツヴァイ、ドライ、戦闘準備急げ!」 「「「了解!」」」 聡美は指示を受けると直ぐさま神姫達の詰め所に向かい、アイン達に出撃指示を出した。 一番機を務めるアイン、接近戦担当のツヴァイ、そして後方支援を受け持つドライで構成される小隊は複数個設定されたルートから突入(否、潜入)した。 「ツヴァイ、ドライ、そろそろ敵が来ますよ」 「判っている・・・」 「OK、いつでもどうぞ」 先頭で呼びかけるエウクランテタイプのアインに対し、それにストラーフタイプのツヴァイとランサメントタイプのドライが答える。 「二人とも安心して。キッチリサポートするから」 「それを聞いて安心しました。・・・・・来ます!」 アインが叫ぶと同時に犯人グループとその神姫達が銃撃してきたが、聡美は咄嗟に避けて難を逃れた。 「イーグル0より各機、散開して各個に応戦!!」 「「「了解!!」」」 自らも物陰に隠れて拳銃で応戦しつつ、聡美は檄を飛ばす。 それを受けたアインはビームライフルで、ツヴァイはサブアームを盾にしながらヴズルイフで、ドライは重装甲にものを言わせて被弾しながらもアクティオンで迎え撃つ。 暗い廃ビルの中、繰り広げられる銃撃戦。辛うじて確認できるのは、大小の銃弾が着弾する音と、マズルフラッシュのみ。後はどれが敵でどれが味方かも判らない闇。 『このままじゃ埒が明かない・・・・。向こうは多人数故に同士討ちの危険も高い。こっちの手持ちは三体、だとすればとれる手は一つ・・・!』 「アイン、ツヴァイ一時後退!!ドライ!反応弾の使用許可!!」 「ええ!?それって一発撃つのに政府の許可が必要じゃ・・・」 「ガス爆発って言い訳しておく!!纏めて吹っ飛ばせ!!」 そう言って聡美はポケットの中から38口径ほどの大きさの反動弾頭を取り出すとドライに放る。 反応弾、赤外線によって誘導され、着弾した際に大爆発(爆風の半径は20センチほど)を起こす強力な爆弾だ。 「もう、どうなっても知りませんよ!!」 とか言いながらもドライは反応弾を受け取り、アクティオンの銃口の先端に装着させて照準を合わせる。 「お願いだからできる限り逃げてよね!!」 アクティオンの引き金が引かれ、白い尾を引きながら飛んでゆく反応弾。 次の瞬間、大爆発が起きて犯人グループの一部と殆どの神姫が熱で、爆風でなぎ倒される。 「相変わらず、凄い威力・・・」 「後で管理官にどう言い訳すれば・・・・。OTL」 「被疑者確保ー!!!」 呆然とするアインとツヴァイを尻目に、聡美の号令一過、警官隊が突入して犯人達の両手首に白く光る手錠を掛ける。 「さてと、私たちは引き続き人質の保護に向かうわ。アイン、ツヴァイ、ぼさっとしてないで行くわよ!」 「そうなる原因を作ったのは姉さんでしょう・・・・!」 「アイン、今は仕事中」 「そうよぉ、後でジェリカン奢ってあげるから」 「はぁあ、寿命縮みそう・・・・」 聡美達が周囲を警戒しながら奥の一室へ足を踏み入れると、人質に(基、神姫質)されていたのか、一体のパーチオが部屋の隅に座り込んでいた。 「姉さん!人質を見つけました!!」 「ご苦労様。保護してちょうだい」 「了解。もう大丈夫よ、安心して」 アインが保護しようとパーチオに近づくも、完全に怯えてしまっており、なかなか向こうも動いてくれない。 「困ったわねえ、これじゃ連れて行きようが無いわ」 「そうだ!姐さん、私に考えがあるわ」 「どうするの?」 「こうするんです」 そう言うとドライはほぼ全ての武装を解除し、パーチオに歩み寄る。 「もう大丈夫よ。怖かったでしょう」 感極まったフェレット型が赤いカブトムシに抱きつく。まるで迷子になっていた子供が、母親を見つけて駆け寄っていくような・・・。 しかし、パーチオは嬉しいはずなのに一向に声を発しようとしない。 「可哀想に、声帯機能が壊れているのね」 「・・・・可愛い・・・」 「にしてもおかしいわねぇ?野良神姫とは思えないし、本当に人質のだったらどっかしらに彼女のオーナーが居るはずなのに・・・・・。まさか・・・・ドライ!その子を離して!!」 「えっ!?」 聡美が叫んだその瞬間、抱きついていたパーチオから閃光が発せられたと思うと、爆発した。 「なんてこと!!神姫に爆弾を仕掛けるなんて!?」 「姉さん!ドライが・・・・ドライが!!」 問題のドライは2メートルほど離れた所に倒れていた。 爆風をもろに受けたドライはあちらこちらがひしゃげてカーボン製の内骨格が飛び出しており、近くにいたツヴァイも顔を中心に損傷を負っている。 「修理班!何人かこちらによこして!!負傷者が出たわ!!!」 聡美が発した通信機への叫び声が、ツヴァイが気絶する前に最後に聞いた声だった・・・・。 無機質な天井がツヴァイの視界に入る。周囲を見渡すと、自身がメンテナンス用のクレードルに寝かされていることが判る。 「ん・・・・、此処は・・・・?」 「気がついたんですね、ツヴァイ」 「アイン・・・?そうだ!ドライは!?」 そう言われて首を振るアイン。 「コアユニットに留まらず、CACにも損傷が・・・。修理班もさじを投げたって姉さんが・・・」 「そんな・・・・・私が、もっと気を付けていれば・・・」 「自分を責めないでツヴァイ。悪いのはあの子に爆弾を仕掛けた連中よ」 「・・・・・・人質は?」 「別働隊が全員保護したわ。安心して」 「そう・・・・なの」 数日後修理が完了したツヴァイは治安局のメンテナンス・センターから出所してきた。 しかし、その顔には斜めに奔る傷跡が無惨に残っている。 オフィスの自身の机に着くと、二人に肩に乗っかられている聡美が口を開いた。 「ちょっとツヴァイ、どうして傷口を消さなかったの?一応神姫なんだし」 「良いの。これは戒めだから・・・」 「それよか、二人に新しい仲間を紹介するわ。ドライ、出てらっしゃい」 「「?」」 すると、一体の神姫が山積みにされた書類の影から現れた。 カーキ色のヘッドマウントディスプレイに赤いお下げ髪が特徴の砲台型神姫、フォートブラッグだった。 「アイお姉様、ツーお姉様、初めまして。本日付でイーグルチームに所属する事になりましたドライです。よろしく・・・」 「貴女は私たちの知っているドライじゃない」 「ツヴァイ・・・」 「まあともかく、三人とも仲良くしなさいよ」 「「「はーい」」」 この段階ではまだまだ馴染めないドライ(2代目)だが、この後初代以上のコンビネーションを発揮することになるが、それはまた本編で。 とっぷへ
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最終幕「其の求める名は」 起動直後の神姫は、最低限のパーソナリティーを有しながらもまっさらな状態で目を覚ます。 それはコミュニケーションをも目的とした玩具、道具であるからである。 余談ではあるがそれは、十数年前まで流行していた育成シミュレーションゲームに取って代わる原因でもあった。 たとえ一度起動したものだとしても、原則的に別のオーナーの所有物になった時点で全ての蓄積されたデータは消去される。新たなオーナーと、新たな関係を作り出すために。 では、この何も加えられてはいない記憶領域に、過去に蓄積された別の神姫の記録をコピーされるとどうなるのだろう。 もちろん、その過去の記録の所有者になるはずは無い。 最低限の個性が、初期段階で生まれているのだから。 しかしそれは、本当の意味で初期状態の個性から派生する人格と言えるのだろうか。 結城セツナの友人となった武装神姫、焔とは別人格の過去の記録をも有する神姫である。 「ご主人、朝ですよ。起きて下さい」 二月の中旬。 この時期、朝と言っても外は未だ薄暗くそして寒い。 礼儀などに厳しくしつけられたセツナも、この時期はベッドから抜け出すのが辛い。 「早く起きてくださいよー」 焔の声がセツナの意識を覚醒させる。 それにしても今日は一段と寒い。 「ごーしゅーじーんー」 とうとう焔はセツナの顔をぺちぺちと叩き始める。 「……わかったわよー」 根負けしてセツナはゆっくりと体を起こした。 途端 「寒っ! なに? 容赦なく寒っ!!」 「雪が降っているのです!!」 肩を抱くセツナとは対照的に、そわそわと落ち着きの無い焔。 ショールを肩に掛けカーテンをめくると、そこは一面の銀世界だった。 「…………カーテンを開けたら其処は雪国だった?」 「それを言うならトンネルを抜けたら、です」 その日は記録的な大雪となり、多くの学校は休校となった。もちろんそれはセツナが通う女子高も同じ事である。 「せっかく雪が降ったのですから、ワタシ外に行きたいです」 焔のその一言で、雪の降りしきる中外に出ることに決定。 天から舞い降りる雪を見れば海神のいなくなった日を思い出してしまうが、それでもセツナは友人たる己の神姫の願いを叶えることを選んだ。 しん、と真っ白な世界を静寂が支配する。 普段なら聞こえてくる喧騒もさすがに今日はなりを潜めていた。 興味深そうにただただ空を見上げる焔の横顔を見ていると、セツナは感傷に浸っている自分が勿体無く感じてくる。 雪の日に海神を失ったけれど、今はその雪を一緒に見る友達がいる。 それはとても幸せな事のように思えた。 「ご主人、雪って本当に冷たいのですね」 そういって無邪気に笑う焔を見て、セツナは先ほど感じた幸せが偽りで無い事を知る。 「そうね。雪って冷たいのよ」 そう言って天を見上げたセツナは、心の中で「ごめんね」と海神に言う。 貴女がいなくなったのに、それでも私は幸せを感じている。だから…… 「ご主人、どうかしましたか?」 そんなセツナの寂しそうな表情を気遣って、焔は尋ねる。 そんな焔にセツナは優しげな笑みで返した。 誰もいないだろうと思いながらも来てしまった神姫センターには、まだらではあるがそれでも人と神姫の姿があった。 その中に見知った顔を見つける。 「あら。奇遇ね」 「あぁ、結城さん」 「おう、結城の所も休校か?」 藤原雪那と式部敦詞が、それぞれティキときらりを伴ってそこにいた。 「焔ちゃん、こんにちはなのですよぉ~♪」 「……どうも」 ティキは無邪気に、きらりは少し含みを持たせて焔に挨拶をする。 「こんにちはー」 「?」 いつか戦った時と比べ、明らかに雰囲気の変わった焔に戸惑うきらり。 だが、あまりに自然に焔と接しているティキを見て、きらりは頷くと改めて焔の目を見つめた。 「え? えぇ?」 その真っ直ぐすぎる眼差しに焔はたじろぐ。 そんな様子までも真摯に見止めてから、きらりはニコリと笑った。 「あの時はごめんなさい。改めて宜しくね」 そういって手を差し出された手に、焔は嬉しそうに手を重ねた。 「あー……なんだか解決したみたいだなぁ」 その神姫たちのやり取りを見ていた敦詞が、面倒臭そうに言う。 「まぁ、ね。二人には迷惑かけたみたいね」 「なんだ? 雪那も何かしたのか?」 「いや、僕は何もして無いよ。結城さんは自分で気が付いたんだから」 「ふーん…… ま、イイけど、ね」 実は敦詞としては雪那がセツナと焔の事に絡んだ事は計算外であったのだが、それを表に出すようなヘマはしなかった。 ただ、「あー……司馬のダンナは出遅れたかな」と思っただけである。 「で、今日はどうしたの? わざわざこんな雪の日に」 「なんていうか、暇を持て余していて、気が付いたらここに」 「以下同文」 「あはは。なら私たちと一緒ね」 今までと違って険が無くなり、明るく笑うセツナを見て敦詞はもう少しだけ認識を改める。「これは司馬のダンナよりも雪那の方が一歩リードしちまったのかな?」と。 「で、これからどうします? 僕とティキはバトルにエントリーしちゃいましたけど」 相変わらずティキにしか興味なさそうな雪那の態度を見て取り、「進展はしそうに無いか、な」と溜息をついた。雪那は朴念仁が過ぎる、と。 「そうねぇ。私もエントリーしてこようかな? 後一勝で昇級資格が手に入るし」 「えー? 僕等と一緒じゃないですか!」 「そうなの? じゃあ、ティキちゃんと戦わないようにしないと」 会話は弾んでるのに、相手にはまるでその気が無いというのだからセツナも浮かばれない。 「ちぇっ。オレ達はまだ先だってのに、ずりーぞお前等!」 未だサードランクより抜け出せない敦詞ときらりであった。 帰り道。 日はすでに沈んでしまったが、降り積もった雪の反射せいか辺りは未だ明るい。 その日焔は見事セカンドへの昇級資格を手に入れた。もちろんティキも一緒だ。後はお互い昇級トーナメントを勝ち抜けば晴れてセカンドランカーの仲間入り、である。 「これは何かお祝いしなくちゃね」 セツナのテンションはかなり高い。 「それなら一つだけ」 おずおずとしながら焔は口を開く。 「ご主人が今一番大切に思うものを教えてください」 「? なんで?」 お祝いというには随分と的外れな問いかけ。セツナが疑問を抱くのも当然といえる。 焔は照れたように体を動かしながら答えた。 「あの……ご主人が大切なものを、ワタシも大切にしたくて、えっと、だから、ワタシも、ご主人と同じくなりたいなぁ……って」 よくは解らない理屈だったが、セツナは一応理解したふりをする。 そして少しだけ考えたふりをし、悪戯めいた笑みを浮かべて焔を見つめた。 「それは凄く大切で、ずっとずっとなくしたくないもの。私が迷ってもきっと助けてくれる」 「なんだか凄いものですねぇ」 半ば感心した様な顔をする焔。 その焔に飛びっきりの笑顔で。 「一番、というのはおかしいかもしれない。だけどきっと私が今一番求めるもののその名は――」 ――Y.E.N.N END―― / 戻る
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G・L外伝 ~Gene Less~ 外伝1 解体屋 「しっかし、なかなかセカンドに上がれないよな。まあ仕事の合間に行く位じゃこんなもんか」 「マスター、私の持つような西洋剣は、どちらかと言えば“斬る”ではなく“壊す”なんですよね?」 「ん? ああ、そうらしいな。侍型の持つ日本刀と違って、重さで斬るからそうとも言えるな。あっちの方がいいか? なら変えるぞ」 「いえ、だったらマスターのお仕事と同じだな、と思いまして。いいですよね、ああいうお仕事」 「いい仕事かねえ。きついし汚れるし、割に合わないぞ。まさかそういうのがいいのか、シビル?」 「はいっ! 親方!!」 「親方言うな親方」 瓦解、崩壊、崩落。落下轟音、大粉塵。 「うにゃぁ!?」 崩れ落ちたビル。巻き起こした土煙はにゃーごと世界を茶色に変える。視界を確保するのに大きく後ろへ飛び退く、つーか思いっきり逃げる。だって怖いんだもんあいつ! なんでにゃーより先に建物ばっかり攻撃するにゃ!? それも、も~満面の笑みで。訳わかんないにゃ!! 跳躍、反転逃避。爆砕、粉砕、崩壊。 「にゃあっ!!! 追っかけてくるにゃ~!?」 三角跳びの足場に使った家屋がどちゃっと一瞬で粉塵に飲まれる。当たり前だけど、敵は思いっきし追っかけて来てるにゃ! にゃーことマオチャオのにゃーの助は、そのなんだか良くわかんない対戦相手から逃げるだけでいっぱいいっぱい。え、マスター? 逃げてにゃいで戦えって? ムリムリムリムリ! にゃーの本能が無理って言ってるもん! いや戦うのが武装神姫だろって? そんなコト言うならマスターが戦ってみるにゃ! 「きっとヘタレはちびっちゃうにゃ・・・ってにゃぁあ~!!!」 崩壊崩落、落下、轟音。 「いたたた・・・なんでにゃーがこんな目にぃ・・・!?」 マスターと口ゲンカしてる内に今立ってた足場までなくなっておっこちたにゃ。あ、危なかったにゃ~。目の前にでっかい鉄骨刺さってるしぃ。 「早く逃げにゃいと・・・ にゃ!?」 なんと気づけばそこはステージの端っこ。もう逃げ場にゃし? そーいえばこのステージ中に響いてた破壊音がもうしてないにゃ。静かになって、ちょっとづつ土埃もおさまって来る。にゃんとそこに広がってたのはガレキだらけのまったいらな荒野。つーかサラ地。ここってゴーストタウンステージだったハズにゃーのにー? 「ぐぐぅ・・こーにゃったら少々見苦しいのも仕方ないにゃ。伏兵に忍ばせておいたぷちを結集してフクロに・・・ あれ? ぷち? オマエラどこにゃ?」 「お探し者は彼等? 駄目じゃないか、現場に子供(?)を連れて来ちゃあ」 「うにゃ!?」 声に振り向くと、そこには下僕(ぷち)たちがくるくる目を回して転がってる。逃げる途中で巻き込まれてたっぽいにゃ、しかも敵に助けてもらうなんて役立たずぅ。 「さて、解体する構造物も無くなったことだし・・」 そういって、煙の向こうから、1歩、また1歩と近付いてくる対戦者。黄色い重甲冑のサイフォス。建物を壊しまくってたのは、左手のドリルと、あと右手に持ったパイルバンカーらしいにゃ。あ、パイルバンカー捨てて、背中のなんかでっかいエモノに持ち替えてる。あれは・・ツルハシぃ? 「そろそろ・・・最後の仕上げと行きますか」 その破壊魔の足音、ひどくゆっくりと近づいて来る。 「・・けど、にゃーだって!」 跳躍、急襲、爪。 勇気を振り絞って飛びかかる。そうだ、きっと怖かったのは、相手がよく見えなかったのと、モノ壊すってヘンな行動のせいにゃ。でもそれが無いなら、理屈から言って残るのは重そーな鎧だけ。なら、あーゆーカタブツなんてすばしっこいにゃーの敵じゃにゃい! 見えるっ! 動きが見えるにゃっ!! 「反撃にゃああああ!」 「ふんっ!」 「にゃ?」 急剛投、穿孔。轟、掠。 「ドリル投げるにゃんて!? ・・でも、そのくらい!」 「隙あり!!」 轟振、打突。飛飛飛飛、子猫。逸、逸、直撃、縺絡。 「にゃあにぃ!? ・・ぶにゃ!!」 にゃんと更に、敵はツルハシでゴルフみたいにぷち達を打ち飛ばす。その内の黒ぷちがにゃーの顔面にぶち当たって視界を塞ぐ。ま、まっくらぁ・・・。 「うにゃあっ! 自分で助けといて、りふじ・・」 「問答無用!!」 剛振、粉砕。 「にゃああん!?」 歩、歩、歩、寄。歩、歩、歩、逃。 「ううぅ。にゃあぁ・・・ 来るにゃぁ・・!」 また、ゆっくりと近付いてくる、黄色いアイツ。なんとか最後の一撃は避けたけど、にゃーの爪はツルハシに壊され、武器がないにゃ。もう後ずさりする場所もないにゃ・・。 無防備で涙目のにゃーを見て、それでもにじり寄ってくるまっ黄色の重鎧。その姿はまるで・・・で・・・で・・・、う~んとえっと~なんていうんだっけかにゃあーゆーの。えっとこーノドモトまで出掛かってるんだけどにゃ~。黄色くって~、なんか重そ~で~、そんでもって色々ぶっこわしてムダムダとか言って~・・・ 「あっ! ロードローラー!」 「せめてバックホーに例えなさ~い!!」 轟打粉砕、昏倒。 『勝者、“サイフォス”シビル!!』 騒、歓声、歓声。 「親方、勝ちましたよ。ファーストリーグ初勝利です! ・・って嬉しくありませんか」 「・・・まあな」 「どうしてですか?」 「お前・・・どうして毎度相手よりフィールド壊すんだよ!? しかも今回はファーストだからリアルフィールドだって言うのに!」 「だって、親方の仕事と同じじゃないですか?」 「同じなわけあるか! 俺は仕事で壊すの! 金貰うの! だけどお前のは一銭にもならないだろ!」 「なりますよ! ファイトマネー貰えるじゃありませんか!!」 「モノ壊したのは報酬に関係ないだろう!!」 「そうです、むしろ赤字です」 「ほらこう言う人だって・・・ え?」 「私、当神姫センターのバトル運営者なんですが・・・」 「はい?」 「ぶっちゃけ出入り禁止」 「はうっ!!」 こうして破竹の勢いでファーストリーグに上り詰めた“破壊王”ことシビルとそのマスターは、初日ソッコーでリーグ参加権剥奪されるという伝説を残しましたとさ。 ちゃんちゃん。 目次へ
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人物 名前:高城・ミッシェル・千尋 13歳 性別:千尋 ニックネーム:総帥 一人称:私(わたし) 二人称:あなた、きみ 科学者レベル:マッドサイエンティスト 一応主役『高城・M・千尋』と略してよい ブカブカの白衣と大きなリボンが目印の、愛すべき総帥様 若年どころか幼年ながら数々の学問に精通し、博士号まで持っているという厨二病全開の設定があるちびっ子 性別の項目がおかしいのは、設定を考えているうちに作者がわからなくなってしまったせいである 「いっそ、性別不明で良いや」と考えてしまったが最後、後は読者の皆様の想像にお任せする 『ミッシェル・サイエンス』をたった一人で取り仕切る恐るべきお子様 神姫 名前:「本名は非公開だ」 戦車型ムルメルティア 階級:少佐 一人称:私(わたくし) 二人称:貴官(きかん)、貴様(きさま) 忠誠度:総帥の為なら死ねる 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の頼れる隊長、コードネーム『α(アルファ)』 帽子や眼帯など戦車型の基本装備を身に着けているが、衣服はオリジナルの軍服に身を包んでいる 千尋は特別なバトルのとき以外は指示を出さないので、実質彼女が全ての指揮系統を担っている 千尋に絶対の忠誠を誓っており、危害を加えるものは容赦なく(人間、神姫関係なく)KILLするつもりでいる 身内以外に対する言動は非常に高圧的。ただし敵対の可能性がゼロになれば(口調こそ厳しいが)面倒見が良い、頼れる指揮官 名前:「非公開だ…例外なく、な」 砲台型フォートブラッグ 階級:大尉 一人称:自分(じぶん) 二人称:君(きみ)、お前 面倒事請負率:かなり高め 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の寡黙な副長、コードネーム『β(ベータ)』 常にバイザーつきの砲撃用ヘルメットを目深に被り、表情がよく見えない 常に櫛や手鏡を持っているなど、実は一番女らしい性格だったりする 後輩への指導は主に彼女の仕事で、曹長と一等兵は彼女が指導した バトルは主にスナイパーキャノンによる精密狙撃とハウィッツァー(曲射榴弾砲)による広範囲爆撃を使い分ける 名前:「公表の予定は無いであります!」 火器型ゼルノグラード 階級:曹長 一人称:私(わたし) 二人称:あなた 語尾:~であります 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の少々ズボラな突撃兵、コードネーム『γ(ガンマ)』 これといった特徴が無い、作者泣かせの困ったちゃん 十分なキャラ立ちができてないせいで、影が薄くなりがち が、語尾のせいで突然会話に参加してもわかりやすい バトルスタイルは後ろは気にせず突撃あるのみというものだが、なぜか生還率は隊の中でトップ 軍人気質…とは程遠いお気楽能天気の寝ぼすけ神姫 名前:「非公開にしろと言われてます」 戦闘機型飛鳥 階級:一等兵 一人称:わたし 二人称:~さん 癖:トリップ、大きな独り言 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の想像力豊かな新兵、コードネーム『δ(デルタ)』 第一話、第二話と連続でメインを張っているが、主役ではない 外見的に特徴は無いのだが、トリップ癖とダダ漏れモノローグで起動から一週間という短い期間の内に強烈なキャラ立ちを果たした 初の空中戦力となるが、今のところバトル未参加なので実力は未知数 今後もエンジン全開で行ってもらいたい 名前:リュミエラ 兎型ヴァッフェバニー 階級:なし 一人称:あたし 二人称:~ちゃん、~くん ついやっちゃったこと:一等兵の拉致 千尋の所持する神姫の一人『特殊部隊』の狙撃、個人撃破担当、コードネーム『B(ビー)』 かわいいものが大好きで豪快なお姉さん 第二話での名前ばらしはわざとっぽい 好物は紅茶とお菓子 バトルは基本的に参加しないが、参加するときは本隊を陽動にして、孤立したものを狙撃するという非常に地味な戦闘スタイル もしくは、もっとも攻撃力の高い相手を誘き出す役目を担う かわいいものはどれだけ見てても飽きないようだ 名前:フェリシエナ イルカ型ヴァッフェドルフィン 階級:なし 一人称:私 二人称:個人名、知らない場合は呼ばない 悩み:豪快すぎる同僚 千尋の所持する神姫の一人『特殊部隊』の潜入工作、索敵担当、コードネーム『D(ディー)』 第二話でやたら喋っているが、本来は無口無表情 同僚のBによって本編中に本名が出てしまったために、キャラ紹介で非公開にできなかった 好みは和菓子に緑茶と、純和風 Bと同じく基本的にバトルは不参加だが、参加するときは潜入偵察と各種センサーによる索敵に徹する さらに必要があれば、拠点の破壊工作や罠の設置など、相手にとって地味な嫌がらせをする 自室の中と外で口数が極端に違う その他のキャラクター 砂木 丈助 34歳 性別:男 相棒:ルルコ(マオチャオ型) 一人称:俺 二人称:お前 相棒との関係:俺の嫁 『砂木探偵事務所』の所長、自称三十代半ばのナイスガイ 幅広いネットワークを駆使して『Forbidden Fruit』まで辿り着いたようだ 相棒のルルコに頭が上がらない ルルコ 猫型マオチャオ 相棒:ジョースケ 一人称:ルルコ 二人称:キミ 伏字:不使用 砂木の所持神姫…というより相棒、ファイル棚の奥も見逃さない 『Forbidden Fruit』の購入はこの娘の強い要望だったようだ 将来の夢は、冗談抜きで『お嫁さん』 企業紹介 ミッシェル・サイエンス 全十階建ての、中心街に立つには規模の小さいビル 千尋が経営している会社…会社と言っているが、働いている人間が一人しかいないため、実質自営業 どういうわけか国の営業許可が下りている 主な事業内容は、神姫のオリジナル武装開発と、神姫サイズの日用品や家電製品の製造販売 そのほかに、神姫用の特殊なボディも作っているが、こちらは発注を受けてから作り始めるオーダーメイド品。お値段も高額 さらに一般公開をしていない特殊なボディも作っているが、こちらは一体で豪邸が土地つきで買える値段になる 詳しい説明は下記を参照 秘密の地下室が存在しているらしい…… 製品紹介 素体 Michelle-001 unripe fruit (未熟な果物) ミッシェルの試作素体、専用コアパーツとのセットで提供 非常に軽く柔軟性に優れる反面、神姫素体としての基礎防御力がゼロに近いので、装甲を追加するなどの処置を取ってもバトルには不向き どうしてもバトルを行いたいのであればヴァーチャルによるものを推奨、なおかつ相当な熟練が必要(神姫、マスター共に) 非常に精密な技術で人間に『似せて』作ってあり、MMSの特徴である剥き出しの間接はなく、肌の質感はもちろん、神姫に必要の無いはずの生殖器まで精巧に作ってある パッと見ると1/10サイズの人間そのもの 食事が可能で、水分以外は体内で完全に分解できる 水分は発汗などで消費することができるが、貯蔵量を超えた場合は強制排出が必要 内臓器官や骨格は完全に再現できなかったため、『人造人間』とまではいかないが、「すでに神姫じゃない」と言っても反論の余地は無い さらに、思考も再現できなかったため、AIを純正のコアパーツからのトレースしている。 手持ちの神姫を当素体に移植することも可能 損傷、故障があっても神姫センター等での修復は不可能ですので、異常が発生した場合は当社まで連絡をしてください 武装は腕、足に換装が必要な装備と遠隔操作ユニット、大多数のリアユニットが装備できない 使用したいのであれば同社の本素体専用装備(別売り)を使用することになる 製作時にある程度ならば体系の変更が可能であり、注文の際にマスターの好みを聞いてから作り始めるオーダーメイド商品 制作期間は受注してから約二ヶ月かかる Michelle-002X forbidden fruit (禁断の果実) ミッシェルの特殊素体、専用コアパーツと衣服もセットで提供 Michelle-001の発展型であるが基本性能は同じである 最大の特徴は体のサイズが10倍だということであり、こちらは近付いても人間との区別がつかない 当然のことながら、神姫バトルに参加することはできない 見た目が人間そのものであっても、当然のことながら人間の医療機関で治療をすることができず、さらに神姫センター等で修理することもできない 異常のある場合は当社まで連絡をください こちらも製作時に体系の変更がある程度可能であり、注文の際に好みを聞いてから作り始めるオーダーメイド商品 製作期間は受注してから約四ヶ月かかる (※商品受け取りの際に質疑応答があることと、受け取り直後にデータチェックがあることを予めご了承ください) 神姫ヴァーチャルコミュニケーションシステム SVCS「にじり口の茶室」 人と神姫を同じスケールにして触れ合うシステム 専用ヘッドセットは全国の神姫ショップにて取り扱っている 神姫はクレイドルを介してシステムに接続、マスターは専用ヘッドセットを装着する事によってシステムに意識を転送する サイズは神姫側に合わせられるため、神姫とコミュニケーションをとる以外にも自身で武装の試用など、擬似的な神姫体験ができる ただし、かたや生身の人間、かたや武装を自在に操る武装神姫なので、パワーバランスは歴然としている システムに入る際は、自分の神姫との関係を一度見直してみる事 神姫との関係が悪いと、接続直後からボコボコにされることもあるかもしれない ……ちなみに、殴られるとちゃんと痛い 以下、話数が増え次第追加します 戻る
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花は咲き乱れて ※注意!18禁です! 登場人物 パンジーのマスター 友人に勧められ、神姫を初めて購入した男 うっかりさん パンジー 花型MMSタイプジルダリアの神姫 大人しい性格 書いた人:優柔不断な人(仮) ちらっ…ちらっ… 「どうしたのです、マスター?」 昨日ウチに来たばかりのパンジーが俺に言った 「いや…なんでもない…」 友達に勧められて初めて買った武装神姫 パッケ絵に惹かれて中身を良く見ずに買ってしまったのだが、まさか中身があんなにえっちなカッコだったとは… 「心拍数及び呼吸数が異常に上昇してるようですが、どこかお体の具合でも悪いのですか? 「いや、大丈夫だ…」 武装させればマシになるのだろうが、武装させる為には直視しなければならない マスター設定をするまでは耐えられたのだが、動き出したらもう恥ずかしくて恥ずかしくて… 「もしかして、私に何か到らぬ点でも?」 「そんなことはないよ」 「でも私が起動してから、ちっとも私の方を見て話して下さらないのですね…」 う…俺が悪いのに…罪悪感が… 「…クスン、申し訳ありません。私が到らないばかりにマスターに不愉快な思いをさせてしまって…」 「そんな事ないぞ!キミがとっても魅力的すぎるから、俺の気持ちが昂ぶるだけだ!昂ぶりすぎるから怖いだけだ!」 ようやく彼女を見ながら、思いをぶつける 「…ホントですか?」 「ああ、本当だ。キミは俺になんか勿体ないくらい眩しすぎるのさ」 「そういうことでしたら相談していただければ良かったのに。私、良い対処法を知っております」 「何?ホントか?」 「はい。古くから伝わる気持ちの昂ぶりを押さえる方法です」 俺の前に来る彼女、そしてちょこんと座り、足を上げ顔を真っ赤にしながら言った 「私の足を持ってゆっくりと『開いたり、閉じたり』してください…」 彼女の言うとおりにしてみる俺 「開いたり…閉じたり…開いたり…閉じたり…」 彼女の透き通るような白い肌、それが微妙に赤みを帯びている… その肌を隠すのはわずかばかりの白い布… 「なんか余計に昂ぶってくるような…」 「ヘンですね…昔から伝えられている方法なのに…?」 彼女のカラダを弄ぶように開いたり閉じたりする俺… …やば…理性が…ぷち… 「パンジー!」 俺はとうとう欲求に負け、彼女の胸へと指を伸ばした 「あっ…」 弱々しく抵抗する彼女。しかし神姫と人間の力の差は歴然だ むにゅ… 「柔らかい…」 「マスター…ダメです…」 彼女の抗議を無視し、胸をいじり続ける くいっ ブラを上にずらす。彼女の胸が丸見えになる 勿論その先端のピンクの突起まで 「あっ…恥ずかしい…」 彼女のささやかな抵抗が、俺の淫らな欲望を増大させる 「キミが悪いんだ…」 「え…?」 俺の言葉に目を丸くする彼女。体が硬直し、抵抗も収まる そんな彼女の体に顔を近づけ ぺろっ お腹から胸、顔まで舐める 「はうっ…私が…いけないんですか…」 「そうだ、キミがいけないんだ…」 もう一度舐める 胸の先端を刺激する 「はうっ…私の、どこがいけないんですか…」 ぺろっ 答えずに舐め続ける 「私が…悪いんですか…申し訳…ありません…」 ぺろっ 不意にしょっぱい味がして驚く俺 ふと見ると彼女は… 「申し訳ありません…マスター…私が…到らないばかりに…」 その小さな体を震わせて、泣いていた …俺は何をやっている? 今俺はなにをしている? 彼女の何が悪いんだ? 悪いのは俺だ 自らの欲望に負けた俺だ 「…マスター、泣いておられるのですか?」 俺は泣いていた 自分の愚かさに 自分の勝手さに 彼女を傷つけた事に… 「…ごめん」 胸から手を離し、箪笥へと向かう 「…あの」 引き出しを開け、ハンカチを取り出す 「ごめん、最初からこうすれば良かったんだ」 彼女にハンカチを掛ける 「…あ」 ハンカチで体を隠す彼女 「ごめん、キミは悪くない。悪いのは俺だ。恥ずかしがりながらも、キミの肌をみたかった俺の…」 「マスター…」 「俺はマスター失格だ。キミを守らなきゃいけないのに、キミを傷つけた。キミを汚そうとした。自分の性欲を満足させるためだけに!」 「そんなことないです…」 「…え?」 「マスターにそんな感情を起こさせた私が悪いんです…」 そういって立ち上がる彼女 「だから…」 顔を真っ赤にし 「私で鎮めてください…」 ハンカチを下に落とし、全てをさらけ出して 「私を…汚してください…」 彼女が言った 「…わかった」 彼女を優しく持ち、テーブルの上へと乗せ、仰向けに寝そべらせる そして、彼女に残った最後の砦…パンティを脱がす 「…あ」 彼女の秘部からはキラキラと光る物が… 「濡れて…いる…」 「恥ずかしい…」 「もっと濡らしてあげるよ」 そう言って秘部に舌を這わせる 「はうぅ…」 熱い吐息を漏らす彼女 そんな彼女の秘部を執拗に攻める俺 だんだん彼女の息づかいが荒くなってくる 「あっあっ…はぅ…あん…あうう…あっ…ああっ!…もう…ダメッ!」 そんな彼女の秘部に最後の一撃を与える 「ああ~~~~~っ!」 背中をピンと反らせ、達する彼女 「ふぅ、ふぅ、ふぅ、はぁ、はぁ…はぁ…」 そんな彼女の頭を、優しく撫でる 「…申し訳ありません…マスターを鎮めなければ…いけないのに…私だけ…」 「…じゃあ、休憩したらこっちも…」 「あ…大丈夫です…」 彼女の返事を聞き、立ち上がりスボンをおろす 「…あ…これがマスターの…おしべ…すごい…」 この表現を聞いて、ああ、やっぱりこの子は花型なんだなと思ってしまった 膝を付き、テーブルの上にいる彼女に男根を近づける 「それじゃ、頼むよ」 「…はい」 そういって男根に手を伸ばす彼女 「…うっ」 触れた途端に快楽が… 「あっ…大丈夫ですか?」 「大丈夫、気持ちよかっただけだから。だから続けて」 「はい…」 そう言って男根を撫で始める彼女 「うう…きもちいい…もうちょっと…強く…早くして…」 しゅっ…しゅっ… 彼女の擦る力が強くなり、速度も上がる しゅっしゅっしゅっしゅっ 「ああっ…先端も舐めて…」 ぺろっ…ぺろっ… 舌による刺激も加わる 先走りの液体と、彼女の唾液とで男根はすっかりビショ濡れになった ぬちゅっぬちゅっ… 濡れた卑猥な音が響く もっと刺激が欲しい… 「ちょっとストップ」 「…はい」 彼女を止める俺 「もう一回寝そべって」 いわれるままに寝そべる彼女 その上に男根を乗せる 「足で締め付けて」 「あ…恥ずかしい…」 そういいつつ足を絡め、締め付けてくれる彼女 「じゃあ、動くから。体をしっかりと固定してね」 テーブルに手を置き、動きに備える彼女 それを確認し、ゆっくりと腰を降り始める ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ… 足で締められた男根は、彼女の秘部とお腹へと擦りつけられる 「おっ…おおっ…すごいくもちいい…」 「んっ…はんっ…私も…ですっ…あん…」 腰を振るスピードを上げる俺 「おっ…おおっ!…もう…そろそろ…」 「はうっ…私もっ!…また…あううっ!…」 「はぁっ!…くっ…くぅっ!でるっ!でるぅっ!」 びゅくっ! 「はうっ!…はあああああっ!」 ビクン! 同時に達し、嬌声を上げる彼女の体へと精液をぶちまける俺 びゅくっ!びゅくっ!びゅくっ! 「うううっ…ううっ…はううっ…」 「ああん、マスター…スゴかったです…」 彼女の体は、俺の放った精液で全身ズブ濡れになった… 「そうしてあなたが生まれたのよ、菜種」 パンジーは目の前にいる種型MMSタイプジュビジー…菜種に向かって話しかける 「ふーん。パパとママって、出会ったときからラブラブだったんだ」 「おいおいパンジー、嘘を教えるなよ」 「えー、嘘なの?」 「一部だけよ」 「どこが嘘なの?」 「それはね───」 終わる あとがき エロ妄想スレに投下したネタを大幅加筆修正してみました ジルダリアの足って、めしべなんだそうで そこにかけたら… とここまで書いて、武装させてなかった事に気付く俺うっかりさん